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『王妃に別れをつげて』 シャンタル・トマ(白水社)

近日公開予定の映画、「マリー・アントワネットに別れを告げて」の原作本、ようやく読みました!
原作のこと、コメントで教えて下さった方、ありがとうございました。

物語は、かつて王妃の朗読係としてベルサイユに住んでいた女性が、1810年のウィーンで、バスティーユ陥落の1789年7月14日~16日までを回想するというものです。
著者のシャンタル・トマが、サド侯爵やカサノヴァなどの18世紀文学の研究者であるので、ベルサイユ宮殿の描写や儀礼、貴族の生活ぶりなどは、非常に読み応えがあります。
また、私自身は、民主主義の世の中に生まれ育ったせいか、どうしても民衆側の視点に立って、フランス革命というものを見てしまいがちですが、貴族から見た革命を、この朗読係の女性の目を通して実際に体験しているような気になりました。
逃亡するのに立派な馬車が必要だとか聞けば、「ありえない!命がかかっているのだから、身一つで逃げればいいのに」と思っていましたが、ベルサイユという”王国”にどっぷりと浸かり、その夢の中で生活していたら、そんな風に考えてしまうのも、無理からぬことだったかもとも思えるようになりました。


映画は、原作と、かなり描き方が違ってしまっているみたいですね。
まず、朗読係は、原作では中年以上の女性ですが、映画では少女に置き換えられてしまっています。
他の点については、まだ見ていないので何とも言えませんが、原作では、王妃個人に心酔というよりも、ベルサイユという世界に魅せられている感じで、その世界に君臨し、象徴となっていたのが、彼女にとって、王妃という存在だったように思います。

映画は、別物になってしまっているかもしれないけれど、ベルサイユ宮殿でロケしたみたいですし、豪華な衣装も楽しみなので、見に行ってしまうかもしれないです。
それはそれと、原作と切り離して見たら、面白いかもしれないですし……。

原作本は、映画公開に伴い、新書版があらたに出版されました。
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